10分で読める
プレゼンの質疑応答のコツ想定問答の作り方と、答えられない質問の返し方
登壇を頼まれた方へ:登壇準備チェックシート(無料・PDF) →

本編は練習どおりに話せた。それなのに、質疑応答で崩れる。手を挙げた人の質問が長くて、何を聞かれたのか分からない。価格を聞かれて、言ってはいけない数字を口にしかける。誰も手を挙げず、司会と目が合ったまま沈黙が続く。
主催者や司会として質疑を回していると、こういう場面に何度も立ち会います。そして毎回思うのは、聞き手の記憶に残るのは本編より質疑のほうだということです。本編は準備した話です。質疑は、その人がその場で考えて答える姿が見えます。そこで信頼されるか、言葉に詰まるかで、話全体の評価が決まります。
うまく答える人は、話がうまいのではありません。来る質問を先に分けて、答える型と答えない範囲を決めてあるだけです。この記事では、プレゼンやセミナーで話す人に向けて、想定問答の作り方、答え方の型、答えられない質問の返し方、質問が出ないときの仕込みを、順にまとめます。質疑応答という言葉の意味や言い換えは、用語集の質疑応答とはに置いています。
想定問答は、質問を3つに分けて作る
想定質問を思いつくままに並べると、答えやすい質問ばかり増えます。「導入にどれくらいかかりますか」「資料はもらえますか」。こうした質問は準備しなくても答えられます。準備が要るのは、答えにくい質問のほうです。
そこで、来る質問を性質で3つに分けて書き出します。
| 種類 | どんな質問か | 例 | 準備の要る度合い |
|---|---|---|---|
| 確かめる質問 | 話の中身を正しく受け取れたか確かめる | 「さっきの数字は、年間ですか月間ですか」 | 低い。資料の後ろに補足を置けば足りる |
| 反対する質問 | 話の前提や結論に疑いを向ける | 「それは大きい会社だからできたのでは」 | 高い。答えの一文と根拠を用意する |
| その先を聞く質問 | 話の外にある、聞き手自身の状況を聞く | 「うちのように担当が1人でもできますか」 | 中くらい。どこまで答えるかの線を決める |
いちばん崩れやすいのは、反対する質問です。前提を疑われると、人は守りに入ります。言い訳が長くなり、聞き手には「痛いところを突かれた」と映ります。反対する質問は、こちらの話に本気で向き合ってくれた証拠でもあります。準備しておけば、むしろ話の説得力を上げる場面に変わります。
その先を聞く質問は、問い合わせや商談にいちばん近い質問です。聞き手が自分の会社に置き換えて考え始めたときに出ます。ここで答えすぎると、その場が個別の相談会になり、ほかの聞き手が置いていかれます。答える深さを先に決めておきます。
書き出す数の目安は、3つの種類それぞれに3〜4問、合わせて10問ほどです。自分だけで考えると甘くなるので、同僚や上司に「いちばん聞かれたくない質問を3つ挙げて」と頼むのが早いです。社外のセミナーなら、営業の担当に「お客様によく聞かれること」を聞くと、反対する質問とその先を聞く質問がまとめて集まります。
想定問答集は、4つの欄で書く
書き出した質問は、表にしておきます。想定問答集というと、質問と答えの文章を長々と書いた資料を思い浮かべるかもしれません。本番で役に立つのは、一目で思い出せる短い表です。
| 欄 | 書くこと | 書き方のこつ |
|---|---|---|
| 質問 | 来そうな質問を、聞き手の言葉で | 「〜ですか」の口語で書く。社内の言い方に直さない |
| 一文の答え | 最初に言い切る答え | 1文で、句点まで。長くなったら答えが決まっていない |
| 根拠 | 答えを支える事実や数字 | 出してよい数字だけ。出典が言えるもの |
| 答えない範囲 | ここから先は話さない、という線 | 「個別の金額」「お客様の名前」など、具体の言葉で |
いちばん大事なのは「一文の答え」の欄です。たとえば「それは大きい会社だからできたのでは」という反対する質問なら、一文の答えは「規模より、担当を1人決めたことのほうが効いています」のように書きます。この一文が書けないなら、話の結論そのものがまだ固まっていません。想定問答を作っていると、本編の弱いところが見つかるのはこのためです。
「答えない範囲」の欄は、社外で話すときほど大事になります。価格、お客様の名前、まだ発表していない計画、他社との比較。会社の名前で話すなら、この線は自分で決めずに、上司や広報と先にそろえておきます。頼まれた登壇を引き受けるときに社内で何を確かめるかは、講演依頼・登壇依頼への返信にまとめています。
できた表は、本番の手元に置いておきます。紙1枚に収まる量にしておくと、質問を聞きながら目で探せます。
答え方の型:言い直す、一文で答える、理由、話に戻す
質問が来たら、次の4つの順で答えます。
- 質問を言い直す:「〇〇は、大きい会社だからできたのでは、というご質問ですね」
- 一文で答える:「規模より、担当を1人決めたことのほうが効いています」
- 理由をひとつ添える:「というのも、担当がいない時期は、同じ規模でも続かなかったからです」
- 話に戻す:「先ほどの3つ目の手順は、ちょうどそのためのものです」
いちばん効くのは、1の言い直すです。理由は3つあります。会場の全員が質問を聞き取れているとは限らないこと。ウェビナーの録画では、質問した人の声が入っていないことが多いこと。そして、言い直すあいだの数秒が、答えを組み立てる時間になることです。長い質問は、言い直すときに要点を1つに絞ってかまいません。「いくつかいただきましたが、まず〇〇についてお答えします」と言えば、失礼にはなりません。
崩れる人は、たいてい2の前に3を話し始めます。「えっと、そうですね、実はその件については背景がありまして」。理由から話すと、聞き手は答えがいつ来るのか分からないまま待たされます。答えを先に、理由はひとつだけ。理由を3つ並べたくなったら、2つは飲み込みます。聞かれたら出せばいいのです。
4の話に戻すは、慣れないうちは飛ばしがちです。ただ、質疑は本編を思い出してもらう最後の機会です。答えを本編のどこかにつなげると、聞き手の頭の中で話がもう一度まとまります。本編の話の組み立て方は、記憶に残るプレゼンの構成に書いています。
答えたあとは、「お答えになっていますか」と質問した人に確かめます。ずれていたら、その場で聞き直せます。ただし、やり取りが3往復を超えそうなら、「続きは終わったあとに、ぜひお聞かせください」と引き取ります。ほかの聞き手の時間を守るのも、話す人の役目です。
答えられない質問・答えてはいけない質問の返し方
想定問答をどれだけ作っても、想定していない質問は来ます。そのときは、質問を2つに分けて考えます。答えを知らない質問と、知っているけれど答えてはいけない質問です。
答えを知らない質問は、「確認してお返しします」と言っていい
知らないことを聞かれたら、知らないと言って大丈夫です。曖昧なまま答えるほうが、あとで信頼を失います。言い方は、次の3つを組み合わせます。
- 分からないと言う:「その数字は、いま手元に正確なものがありません」
- 分かる範囲を言う:「私たちの場合は、〇〇の範囲でした」
- あとで返す約束をする:「確認して、終わったあとのお礼のメールでお返しします」
3つ目の約束は、本当に守れる形で言います。主催者がいるセミナーなら、終わったあとのメールに答えを載せてもらえるか、事前に相談しておくと安心です。答えを後日届けると、それがきっかけで個別のやり取りが始まることもよくあります。
答えてはいけない質問は、理由を短く言って断る
価格、お客様の名前、発表前の計画、他社の評価。こうした質問には、答えられない理由を一言添えて断ります。
個別のお客様の数字は、お約束でお出しできないんです。全体の傾向でよければ、〇〇です。
ポイントは、断ったあとに代わりに出せるものを添えることです。「お出しできません」で終わると、聞き手は突き放されたように感じます。全体の傾向、公開している資料、個別に相談できる窓口。何かひとつ渡せれば、場は冷えません。
他社との比較を聞かれたときは、他社の評価をしないのが基本です。「他社さんのことは正確に申し上げられないので、私たちが大事にしていることをお話しします」と、自分の側の話に置き換えます。
質問ではなく、意見や反論が長く続いたとき
ときどき、質問の形をとった長い意見が来ます。途中で遮る必要はありません。終わったら、「ありがとうございます。〇〇というご意見として受け止めました」と要点を言い直し、答えられる部分にだけ一文で答えます。議論を続けたい様子なら、「この場では時間が限られるので、終わったあとにぜひ」と引き取ります。引き取りの言葉は、司会と先に決めておくと、話す人が一人で背負わずに済みます。
質問が出ないときの仕込み
質疑の時間に手が挙がらないのは、話がつまらなかったからとは限りません。多くは、最初の1人になるのが気まずいだけです。司会として客席を見ていると、聞きたいことがありそうな顔はいくつもあります。最初の1問が出ると、2問目からは続きます。
だから、最初の1問は仕込んでおきます。やり方は3つあります。
- 司会かモデレーターが最初の1問を持っておく:手が挙がらなければ、「では私から1つ」と始めます。その答えを聞くあいだに、客席は自分の質問を考えられます
- 事前に質問を集めておく:申込フォームやアンケートで「当日聞きたいこと」を受けておき、そこから読み上げます。ウェビナーなら、配信ツールのQ&A機能に本編の途中から書き込んでもらいます
- 本編の最後に、質問の呼び水を置く:「よく聞かれるのは〇〇なんですが」と1つ話してから質疑に入ると、似た質問が出やすくなります
司会と前もって決めておくことは、次の5つです。
| 決めること | 決めないと起きること |
|---|---|
| 質疑の時間(持ち時間に入るか、別枠か) | 本編が延びて、質疑がなくなる |
| 最初の1問を誰が持つか | 沈黙のまま時間が過ぎる |
| 質問を誰が読むか(ウェビナー) | 話す人が画面の質問を探して、間が空く |
| 答えにくい質問の引き取り方 | 話す人が、その場で一人で判断することになる |
| 時間が来たときの締め方 | 質問が続いて、終わりの時刻を過ぎる |
司会の側のせりふは、セミナーの司会台本の書き方の「質疑」の場面にまとめています。
場面ごとの違い:セミナー・ウェビナー・社内・パネル
答え方の型は同じでも、場面によって気をつけることが変わります。
| 場面 | 質問の来方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 社外のセミナー | 手を挙げて、マイクで聞く | 質問した人の会社名を読み上げない。答えない範囲を社内とそろえておく |
| ウェビナー | Q&A機能やチャットに文字で届く | 読み上げる前に、名前や会社名が入っていないか確かめる。質問を言い直してから答える |
| 社内のプレゼン | 決める立場の人から、鋭く来る | 反対する質問の準備を厚くする。答えは結論から。数字の根拠は資料の後ろに置く |
| パネルディスカッション | モデレーターが振る | 自分に振られた質問だけに答え、短く切って次の登壇者に渡す |
ウェビナーは、文字で届くぶん、読み上げる側が質問を選べます。似た質問はまとめて答えると、時間の節約になります。録画を公開するなら、質問した人の名前を読み上げないのが安全です。
社内のプレゼン、とくに決裁をもらう場では、質疑がそのまま判断の場になります。想定問答集の「反対する質問」の欄を、いちばん厚く作ってください。
パネルでは、自分の答えが長くなると、ほかの登壇者の時間を食います。モデレーターから振られたら、一文で答えて、理由をひとつ添えたら終わり。パネルの組み立て方はパネルディスカッションの進め方にあります。
よくある質問
想定問答は、いくつ用意すればいいですか?
10問ほどで足ります。数を増やすより、反対する質問を3つ、その先を聞く質問を3つ、しっかり作るほうが本番で役に立ちます。答えやすい確かめる質問は、資料の後ろに補足のスライドを置いておけば、その場で開いて答えられます。
質疑応答が苦手で、毎回頭が真っ白になります。
真っ白になるのは、答えを一から組み立てようとするからです。答え方の型(言い直す→一文で答える→理由→話に戻す)を決めておけば、考えるのは「一文の答え」だけになります。それでも詰まったら、「少し考えさせてください」と言って、一度水を飲んでください。話す人が思うより、その沈黙は短く感じられています。登壇の準備全体の進め方は、セミナー登壇の準備の進め方にまとめています。
質問した人の名前や会社名は、聞いてもいいですか?
場の目的で決めます。終わったあとに個別に連絡したいなら、名乗っていただくようお願いするのも一つです。ただ、名乗りを求めると手が挙がりにくくなります。録画を公開するウェビナーやセミナーなら、名乗りは求めず、質問だけを受けるほうが安全です。どちらにするかは、話す人ではなく主催者が決めて、司会から伝えてもらいます。
まとめ
- 質疑応答は、話の評価が決まる時間。うまい人は、話がうまいのではなく準備が分かれている
- 想定質問は「確かめる・反対する・その先を聞く」の3つに分けて、合わせて10問ほど書き出す
- 想定問答集は「質問/一文の答え/根拠/答えない範囲」の4つの欄で、紙1枚に収める
- 答え方は、言い直す→一文で答える→理由をひとつ→話に戻す
- 知らないことは「確認してお返しします」。答えてはいけないことは、理由を一言添えて、代わりに出せるものを渡す
- 最初の1問は、司会と決めて仕込んでおく
- 場面(社外・ウェビナー・社内・パネル)で、気をつけることを変える
登壇の準備は、登壇準備チェックシート(無料)を上から順に使うと、質疑の確認まで抜けがありません。大事な登壇の話の中身と想定問答を一緒に作りたいときは、hytenの登壇・プレゼンのプロデュース(Impact Pitch Produce)に、社内で質疑に強い話し手を育てたいときはプレゼンテーション研修にご相談ください。
自社の場合はどうだろう?と思ったら。
予約はカレンダーから空き枠を選ぶだけ。日程が決まっていなければフォームからでも大丈夫です。
構想段階の壁打ちでも歓迎です。売り込みはしません。
